消化器外科医として長年病院勤務をしていた私は、手術や抗がん剤治療、緩和ケアなどさまざまな診療を行ってきました。しかし、担当患者さんが退院して療養生活に入られるのを見送るたびに、最期まで自分の手で診たいと考えるようになっていました。患者さんの望む病院以外の場所で治療を提供できる訪問診療は、社会になくてはならないサービスです。訪問診療の必要性を感じて勉強を始め、学びの中で研修先として紹介されたのが𠮷田クリニックでした。𠮷田先生は訪問診療というフィールドで多職種と連携をはかり、がん末期や難病患者さんにも病院と同等レベルの高度な医療を当たり前のように提供されていました。医療の質もずば抜けていて、これまでに出会ったことがない面白い先生だと思ったのが最初の印象です。研修を終えてからも𠮷田先生との交流は続き、理念に共鳴し2018年に𠮷田クリニックに入職して訪問診療医としてのスキルを磨いてきました。
これまで東京、埼玉、大阪など各地で訪問診療を経験してきて感じるのは、名古屋は訪問看護師や訪問介護員さんたちのマンパワーが充実し、質の高い在宅医療サービスを提供している地域だということです。この地でいち早く訪問診療に取り組み、地域の医療人材を育て、多職種連携によるチーム医療を構築してきた𠮷田クリニックも、名古屋の在宅医療発展の一翼を担ってきました。当クリニックの強みは、在宅医療の先進地域の名古屋で訪問診療の枠にとらわれない医療を提供するとともに、医療に限らず看護や介護の目線も大事にしていることです。今後は地域における先駆者的な役割を引き継いで多職種連携の強化をはかるとともに、クリニック内の教育体制も強化していきます。患者さんとご家族目線、医療と看護・介護目線で求められる人材を育て、多職種との信頼を深めてチーム医療のレベルを上げ、地域に選ばれるクリニックとしての魅力を高めていきたいと考えています。
医師や看護師が常に側にいる病院とは違い、在宅療養の患者さんはご家族と、あるいは周りに誰もいない不安の中で闘病生活を送っています。特に重症患者さんやお看取りが近いがん末期の患者さんとそのご家族は、容体が安定していたとしても不安を感じることは多いと思います。そうした気持ちを少しでも取り除いて穏やかにお過ごしいただくためには、患者さんの痛みを和らげるだけでなく、看護や介護による普段のケアと一歩先の状況を見据えたフォローも欠かせません。経過を把握する医師が定期的に訪問し、緊急時を含めて何かあったときにいつでも往診にいけることはもちろん、訪問診療に関わるスタッフが思いをひとつにして寄り添うことが何より大切です。心のケアや生活のサポートにもきめ細かく対応できる人材を育て、患者さんとご家族に絶対的な安心感をお届けできるように努めてまいります。